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被害の実態・おそれ |
生態系にかかる影響 |
北海道や本州の亜高山帯にある国立・国定公園など、自然性の高い環境や希少種の生育場所に侵入し、駆除の対象になっている。
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農林水産業への影響 |
畑地、果樹園の雑草とされる。
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人の健康への影響 |
花粉症の原因植物として知られている。
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被害をもたらしている要因 |
生物学的要因 |
日当たりの良い、肥沃で水分の豊富なやや重粘土壌を好むが、酸性土壌に耐えるなど、土壌への適応性は高い。地下茎と地中深く伸びる根群により耐旱性がある上、耐暑性は寒地型牧草の中では最強である。耐寒性もある。種子の生産量は多い。
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社会的要因 |
第二次大戦後、環境への適応性、耐病性、耐暑性に優れたアメリカの品種のケンタッキー31が導入されてから、全国的に広く栽培されるようになった。深根性で極めて永続性に優れ、土壌保全能が高いことから、傾斜放牧地の牧草、道路の法面緑化、樹園地の被覆植物、半乾燥地の植生回復などに多く用いられる。種子が安価かつ大量に入手でき、耐寒性、耐暑性ともに優れるなど汎用性もあり、寒冷地の凍土融解浸食防止の機能等も高く、緑化用植物として必要な多くの特性を持つことから、寒冷地を初め、各地で最も一般的な緑化用植物の一つとして使用される。牧草としての嗜好性や栄養価はチモシー(オオアワガエリ)、オーチャードグラス(カモガヤ)、ライグラスに劣るが、アルカロイド含量が少なく、寒地~暖地に生育するため、管理方法に関する検討は多い。暖地での放牧利用期間は長い。発芽や初期成育が良好で、ネザサやススキ草地でも刈払い、火入れ等の簡単な処理と、下種、施肥により比較的容易に草地造成ができる。
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特徴並びに近縁種、類似種 |
ウシノケグサ属は世界で約200種が知られている。日本には数種が自生する。日本では北海道と九州で育種が行われ、ホクリョク、ヤマナミ、ナンリョウサザンクロス等の品種が育成された。アメリカ、フランス、オランダ、イギリス等で様々な品種が育成されている。現在、芝草用として多数の品種が輸入・販売されているが、これらはエンドファイト(内生菌)を接種・感染させて環境耐性や虫性を付与したもので、家畜に有害なアルカロイドを含む。牧草としての草質や低温伸長性を改良するため、ネズミムギ(イタリアンライグラス)との属間雑種による新品種育成の取り組みが行われている。近縁種のヒロハウシノケグサとは葉耳に縁毛があることで区別できるが、縁が早く朽ち、しばしば下側に内巻くために縁毛を見出すのが困難なことが多い。 |
対策 |
永続性や土壌保全能力が高く、環境への適応性も高いことなどから、牧草や緑化植物として全国で広く用いられているが、自然性の高い環境や希少種の生育環境に侵入し、駆除の対象になっていることがある。逸出によるこうした問題が起こらないよう適切な管理を行うとともに、自然環境にも配慮した品種または他の種類の利用の可能性を検討することが望まれる。 |
その他の関連情報 |
英名のトールフェスクTall fescueが、日本でも広く使われている。オニウシノケグサが混播種草種の一つとして入っている草地面積を種子の需要量などから推定したところ15万ha程度で、栽培面積が特に多いのは九州地方の標高300~700mの地帯であった。播種後年数の経過とともに、在来種が侵入し衰退する例が知られる。不良草種 |