ツチガエル
  両生類 ⁄ 国内外来種
ツチガエル
目名 無尾目
科名 アカガエル科
種名(亜種名 ツチガエル
学名 Rana rugosa
カテゴリー 北海道 A3
環境省  
ワースト100   
*)亜種が問題となっている場合は、カッコ内に亜種名を記載しています。
●種名が特定できないものについては、「○○○の一種」と記載しています。

導入の経緯

原産地 日本、朝鮮半島、中国東北部、ロシア沿海州南部
導入年代 1977年以前
初報告 1989年(*1)
全国分布 北海道、本州、四国、九州、佐渡島、隠岐、壱岐、五島列島など
道内分布 赤平市、旭川市、芦別市、江別市、札幌市、滝川市、深川市、愛別町、木古内町、北桧山町、知内町、せたな町、秩父別町、当別町、当麻町、長沼町、奈井江町、七飯町、沼田町、羽幌町、丸瀬布町、由仁町(*1,2,4~18)
導入の原因 本州産のコイの導入に紛れて定着した(*2)。

種の生物学的特性

生活史型 平地に生息し、水辺をあまり離れない。
形態 体長は37~53mm。アリ、バッタなど小さな昆虫やクモなどを捕食する。褐色~灰褐色で背面にいぼがたくさんある。
繁殖形態 水田、池、沼などで繁殖する。 5月末~8月末に繁殖する。メス1匹あたりの産卵数は約1000個で、これを1回で産む個体もいるが、2~3回に分けて産む個体もいる。卵は5日で孵化。 幼生は多くの場合越冬し、翌年上陸する。
生息環境 平地から低山地にかけての池、水田、流れの緩やかな沢、河川敷、高層湿原などに生息する。
特記事項 外敵に捕まると悪臭を放つ粘液を分泌する。

影響

被害の実態・おそれ 生態系にかかる影響 他の小動物を捕食して生態系を攪乱している。 カエルやサンショウウオの餌となる昆虫類を捕食し、生息に競合を起こすおそれがある。 両生類の安易な移動放逐は両生類の伝染病を蔓延するおそれがある。
農林水産業への影響 不明
人の健康への影響 不明
被害をもたらしている要因 生物学的要因 北海道に生息する在来のカエルより大型で、生態系の上位捕食者である。 世界的規模での両生類の減少に関わる感染症としてカエルツボカビとラナウイルスが重要視され、両生類の安易な移動は両生類に広く感染をもたらす病気を媒介するおそれがある。
社会的要因 コイの輸送時に同じ水に入って本州から移入した。道内移動でも分布を広げた個体群もいると思われる。 各地の養鯉場から移入されているため、さまざまな地域の個体群が移入されている。
特徴並びに近縁種、類似種 「ギュッ、ギュッ」もしくは「グ・グ・グ」という声で鳴き、在来のエゾアカガエルやニホンアマガエルと声が違うため、生息の確認はしやすい。アズマヒキガエルの幼体に似るが、耳腺はない。
対策 捕獲、卵塊の除去。放逐や移動が起こらないよう教育、啓発。 飼育や管理において逸走しないよう徹底。
その他の関連情報 ツチガエルは平成20年3月時点で野外でのカエルツボカビ感染陽性報告がある(*3)。

写真・イラスト

  さけ科学館 提供   中林成広 提供  
  酪農大吉田研究室 提供

備考

備考  

参考文献

参考文献 (*1)白井馨(1989)北海道に生息するカエル類.北海道理科教育センター研究紀要.1.47-50.
(*2)斎藤和範(2001)北海道夕張郡馬追丘陵付近のツチガエルの分布とその移入経路.旭川博物館報告,7:39-43.
前田憲男,松井正文(1989)ツチガエル.日本カエル図鑑.pp96-99.文一総合出版. 
松井 正文(2007) スタイネガー(1907)に掲載された日本とその周辺地域産無尾両生類を見直す.日本爬虫両生類学会誌2007-2.pp.164-172.
(*3)財団法人自然環境研究センター(2008) 平成19年度 カエルツボカビ実態把握調査検討業務報告書.
宇根有美(2009) 両生類のラナウイルス感染症.モダンメディア2009第7号.pp189-197.栄研化学株式会社
(*4)生物多様性調査動物分布調査報告書(第5回・両生類爬虫類),p51,67,69,73,100,環境省自然環境局・生物多様性センター
(*5)斎藤和範(2004)北海道に生息するカエル類.「モーリーNo.11」.pp.60-65.北海道新聞社
(*6)河川水辺の国勢調査(河川環境データベース).H10-H19年度.国土交通省・H11,H15年度該当
(*7)堀繁久他(2002)野幌森林公園の両生類について.北海道開拓記念館研究紀要.30.pp21-26
(*8)斎藤和範他(2000)札幌市及び旭川市近郊に分布しているツチガエルの移入経路の推定とその社会背景.旭川市博物館研究報告.6.pp35-44
(*9)出羽寛他(1997)旭川市周辺におけるツチガエルRana rugosaの分布.旭川市博物館研究報告.3.pp19-23
(*10)斎藤和範(2006)北海道空知地方におけるツチガエルの新分布地-赤平市-.旭川市博物館研究報告.11.pp39-41
(*11)斎藤和範他(2001)北海道におけるツチガエルの新分布地-北桧山町-.旭川市博物館研究報告.7.pp45-47
(*12)斎藤和範他(2005)北海道南部におけるツチガエルの新分布地-木古内町及びその周辺-.旭川市博物館研究報告.11.pp43-45
(*13)斎藤和範他(2000)北海道芦別市で発見されたツチガエル.旭川市博物館研究報告.6.pp29-30
(*14)斎藤和範(2001)北海道夕張郡馬迫丘陵付近のツチガエルの分布とその移入経路.旭川市博物館研究報告.7.pp39-43
(*15)斎藤和範(2000)北海道滝川市近郊におけるツチガエルの分布とその移入経路の推定.旭川市博物館研究報告.6.pp31-34
(*16)斎藤和範他(2001)北海道羽幌町におけるツチガエルの移入経路.旭川市博物館研究報告.7.pp49-52
(*17)(2009現在)さけ科学館調査データ.淡水魚ほかの記録.2002年~2008年(札幌市豊平川さけ科学館)
(*18)張瓊文(1996)ツチガエル.「日本動物大百科5両生類・爬虫類・軟骨魚類」(千石正一ほか編),p39,43-44.平凡社.
斎藤和範他(1997)北海道のツチガエルRana rugosa(Ranidae, Amphibia)はnativeか?Immigrantか?. 旭川市博物館研究報告.3.pp11-17