魚類 ⁄ 国外外来種 | ||||
ニジマス | ||||
目名 | サケ目 | |||
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科名 | サケ科 | |||
種名(亜種名*) | ニジマス | |||
学名 | Oncorhynchus mykiss | |||
地方名 | レインボートラウト(英名もしくは釣り人による呼称) | |||
カテゴリー | 北海道 | A2 | ||
環境省 | 要注意外来生物 | |||
ワースト100 | 日本の侵略的外来種ワースト100(日本生態学会) / 世界の侵略的外来種ワースト100(IUCN) | |||
*)亜種が問題となっている場合は、カッコ内に亜種名を記載しています。 ●種名が特定できないものについては、「○○○の一種」と記載しています。 |
原産地 | 北アメリカ大陸の太平洋側とカムチャッカ半島 |
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導入年代 | 1917年 (日本へは1877年) |
初報告 | 北海道では1920年、支笏湖に放流 |
全国分布 | 40都道府県 |
道内分布 | 道内ほぼ全域の72水系 |
導入の原因 | 当初は食料供給用あるいは釣り用、現在は釣り対象に放流されている。 |
生活史型 | 淡水型、遡河回遊型 |
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形態 | 頭部は扁平し、尾柄は太い。背側は黄色がかったオリーブ色であることが多く、尾叉長15cmほどに成長すると、えらぶたから尾柄までの側線上に赤紫または紅色の鮮明な縦帯が発現する。幼魚はヤマメと似るが、本種の方が背びれや尾びれの黒点が多いことから判別できる。河川型では1年で尾叉長8~20cm、2年で16~25cm、3年で18~30㎝、45~50cmには5ないし6年で成長する。一方、湖沼型では1年で尾叉長19~26cm、2年で31~38cm、3年で37~49㎝に達する。成長が早いドナルドソン系では、飼育下では3年で尾叉長60cmを超える。未成魚は昆虫を多く捕食するが、大型の成魚は他の小魚や甲殻類も捕食する(*2,3)。 |
繁殖形態 | 多回産卵型。本道における産卵期は1~6月で、河川上流の淵尻や瀬頭の浅い砂礫底に産卵床をつくる。積算水温330℃/日に達する頃孵化する(*3)。 |
生息環境 | 河川の上流から下流と自然湖沼、ダム湖など。まれに降海型も見られ、スティールヘッドとよばれている(*2,3)。 |
特記事項 | 特になし |
被害の実態・おそれ | 生態系にかかる影響 | 1)採餌をはじめとするニッチの争奪により、種間競争が発生する。2)産卵床の競合で、在来種の生存率を低下させるおそれがある。これらの原因により、オショロコマなどイワナ属やイトウが駆逐され、本種との置換が発生している水域が報告されている。 |
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農林水産業への影響 | サクラマス(ヤマメ)への影響(*2,3)。 | |
人の健康への影響 | 不明 | |
被害をもたらしている要因 | 生物学的要因 | 1)在来種であるサクラマス(ヤマメ)やアメマス(イワナ)、あるいはイトウと同様の環境で、それらより後に産卵するため。2)採餌をはじめとするニッチが在来種と競合するため。3)自然河川において、天然化で再生産されていると推測されるため(*2,3,4)。 |
社会的要因 | 遊魚目的での放流や、一部では水産資源として養殖され、需要が高い魚種である。 | |
特徴並びに近縁種、類似種 | 幼魚のうちは、ヤマメに類似する。本種は多くの系群・品種が知られており、なかでも降海型の系群を選抜改良したドナルドソンや、突然変異固定品種のホウライマスは、本道でも放流されている(*2)。 | |
対策 | 不明 | |
その他の関連情報 | 先進的な釣団体の中には放流自粛する動きがある一方、自治体などが実施するイベントでは、現在でも多くの個体が放流されている。 |
備考 |
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参考文献 | 鷹見達也・青山智哉. 1999.北海道におけるニジマスおよびブラウントラウトの分布.野生生物保護,4,11-8. (*1)松沢陽士・瀬能宏.2008.日本の外来魚ガイド.P80-87, 文一総合出版,東京 (*2)青山智哉. 2003.新北のさかなたち(上田吉幸・前田圭司・嶋田 宏・鷹見達也編),pp.126-131,北海道新聞社,札幌. (*3)三沢勝也・菊池基弘・野澤博幸・帰山雅秀. 2001. 外来種ニジマスとブラウントラウトが支笏湖水系の生態系と在来種に及ぼす影響. 国立環境研究所研究報告, (167), 125-132. 帰山雅秀,etc.2008.ニジマス.サケ類の生態系保全と再生.水産資源の増殖と保全,p22,成山道書店,東京 斉藤寿彦.鈴木俊哉.2008.北海道のサケ・マス増殖河川におけるニジマスおよびブラウントラウトの生息状況.さけ・ます資源管理センター業績.(B第18号),p72 札幌市豊平川さけ科学館.北海道札幌市およびその近郊における淡水魚の分布 ─ 1992~2002年における採集記録 ─.札幌市豊平川さけ科学館館報第14号,p.31-35,札幌 中田和義.et.al.2006.移入種ブラウントラウトが淡水産甲殻類に及ぼす影響.日本水産学会,72(3),p447-449 Nomoto, K, H. Omiya, T. Sugimoto, K. Akiba, K. Edo, and S. Higashi. 2009. Potential negative impacts of introduced rainbow trout on endangered Skahalin taimen through red disturbance in an agricultural stream, eastern Hokkaido. Ecology of Freshwater Fish. Doic: 10.1111/j.1600-0633.2009000396. 青山智哉・鷹見達也・藤原 真・川村洋司. 1999.北海道尻別川におけるニジマスの自然繁殖.北海道立水産孵化場研究報告,(53),29-38. 北野 聡・中野 繁・井上幹生・下田和孝・山本祥一郎. 1993.北海道幌内川において自然繁殖したニジマスの採餌および繁殖生態.日本水産学会誌,59,1837-1843. 谷口義則. 2002.ニジマス.外来種ハンドブック(日本生態学会編),p.112,地人書館,東京. Inoue, M., Miyata, H., Tange, Y., and Taniguchi, Y. (2009) Rainbow trout (Oncorhynchus mykiss) invasion in Hokkaido streams, northern Japan, in relation to flow variability and biotic interactions. Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences 66: 1423-1434. 永沢亨, 森田健太郎, 坪井潤一 (2009) 北海道東部中規模河川庶路川における魚類の流程分布と魚類相の変遷.魚類学雑誌, 56: 31-45 山本敦也 (2008) 知床半島の小河川におけるニジマスの分布状況と食性.野生生物保護, 11(2): 19-28. Han, M., Fukushima, T. and Fukushima, M. (2008) Effect of damming on distribution of rainbow trout in Hokkaido, Japan. Environmental Biology of Fishes 84: 175-181. Han, M., Fukushima, M. and Fukushima, T. (2008) A spatial linkage between dams and non-native fish species in Hokkaido, Japan. Ecology of Freshwater Fish 17: 416-424. 遠藤辰典 (2007) 北海道南西部の良瑠石川におけるニジマスとサクラマスの種間関係.北海道大学大学院水産科学院修士学位論文 Baxter, C.V., Fausch, K.D. Murakami, M. and Chapman, P.L. (2007) Invading rainbow trout usurp a terrestrial prey subsidy from native charr and reduce their growth and abundance. Oecologia 153: 461-470. Baxter, C.V., Fausch, K.D. Murakami, M. and Chapman, P.L. (2004) Fish invasion restructures stream and forest food webs by interrupting reciprocal prey subsidies. Ecology 85: 2656-2663. Morita, K., Tsuboi, J. and Matsuda, H. (2004) The impact of exotic trout on native charr in a Japanese stream. Journal of Applied Ecology 41: 962-972. 森田健太郎, 岸大弼, 坪井潤一, 森田晶子, 新井崇臣 (2003) 北海道知床半島の小河川に生息するニジマスとブラウンマス.知床博物館研究報告 24: 17-26. Taniguchi, Y., Fausch, K.D. and Nakano, S. (2002) Size-structured interactions between native and introduced species: can intraguild predation facilitate invasion by stream salmonids? Biological Invasions 4: 223-233. Taniguchi, Y., Miyake, Y., Saito, T., Urabe, H. and Nakano, S. (2000) Redd superimposition by introduced rainbow trout, Oncorhynchus mykiss, on native charrs in a Japanese stream. Ichthyological Research 47: 149-156. |
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