ミステリークレイフィッシュ (マーブルクレイフィッシュ)
  昆虫以外の無脊椎動物 ⁄ 国外外来種
ミステリークレイフィッシュ (マーブルクレイフィッシュ)
目名 十脚目
科名 アメリカザリガニ科
種名(亜種名 ミステリークレイフィッシュ (マーブルクレイフィッシュ)
学名 Procambarus fallax
地方名  
カテゴリー 北海道 C
環境省  
ワースト100   
*)亜種が問題となっている場合は、カッコ内に亜種名を記載しています。
●種名が特定できないものについては、「○○○の一種」と記載しています。

導入の経緯

原産地 北アメリカのフロリダ周辺
導入年代 不明
初報告 2007年に西岡公園で発見された (*5)。
全国分布 北海道
道内分布 札幌市の西岡公園
導入の原因 飼育個体の放流

種の生物学的特性

生活史型 全ての個体がメスで、オスは確認されていない。メスだけで卵の発生が進む単為生殖を行うため、繁殖にオスは必要とされない(*1,2,3)。
形態 体長は約7~10cmになると考えられる(*4)。大理石(マーブル)斑の模様がある。
繁殖形態 単為生殖を行う。
生息環境 アメリカザリガニより温暖な環境を好む。
特記事項 十脚類で単為生殖するものは本種だけである。全ての個体が遺伝的情報が同一であるため、分子生物学や発生学、遺伝学における実験動物としての価値が高い(*1,2)。そのため、国外では大学をはじめとする研究機関での飼育が増えており、日本では繁殖と飼育が容易なため飼育を愛好する方がいる。 欧州各国やマダガスカル島では野外への定着が確認されており、生態系への悪影響が懸念されている。また水田への農業被害を懸念されている(*3)。      

影響

被害の実態・おそれ 生態系にかかる影響 影響については不明であるが、野外で採集された個体は胃の中に繊維質が充満しているため植物を主に食べると思われる。またアメリカザリガニと近縁であるため、同様に水草、水生昆虫などの小動物、小魚、動物の死骸などを食べることで陸水生態系に大きな影響を及ぼす可能性がある。また、ザリガニカビ病を媒介し、他のザリガニ類の生存に深刻な影響を与える可能性が考えられる。
農林水産業への影響 不明
人の健康への影響 不明
被害をもたらしている要因 生物学的要因 単為生殖を行うため、増殖の速度が非常に早い(*1,2,3)。
社会的要因 他のザリガニ類の多くが特定外来生物に指定され、取引きが規制される中で、本種は指定されていないため、ザリガニ類の愛好家たちの中で活発に取引されているものと思われる。道内ではホームセンターなどでも販売されている。
特徴並びに近縁種、類似種 生息環境、餌成分が違えば体色は異なり、青みを帯びることがある。ただし、大理石模様は普遍である。
対策 飼育個体の野外放出を防ぐ。飼育愛好家に危険性を普及する。
その他の関連情報 本種は、1990年代にドイツのペットショップで確認され、日本のペットショップでも見られる(*4)。通常、ザリガニ類で種を分類するのは成体のオスの生殖器の形等が基準となるが、本種はメスしかいないので分類学的な位置づけが定めづらい。Procambarus fallaxか、Procambarus alleniの可能性があり、生殖器以外の形態的特徴は前者と合致する(*4)。また色彩的な特徴として、後者は口周辺が黒色となり前者は黒色にならないので、生きていれば容易に区別が付けられる。 ドイツ語名はMarmorkrebs, 英名は Marbled crayfish。ドイツの観賞魚業界で最初に見つかり、同じく野外でも採集されているのでドイツ語名が用いられることが多い。

写真・イラスト

備考

備考  

参考文献

参考文献 (*1) Scholtz et al., 2003, Parthenogenesis in an outsider crayfish. Nature 421, 806
(*2) Martin et al., 2007, The parthenogenetic Marmorkrebs (marbled crayfish) produces genetically uniform offspring., Naturwissenschaften 94, 843-846
自然環境研究センター 2008 アメリカザリガニ 日本の外来生物 自然環境研究センター編著 平凡社 215-217
(*3)Kawai T, Scholtz G, Morioka S, Ramanamandimby F, Lukhaup C, Hanamura Y. 2009. Parthenogenetic alien crayfish (Decapoda: cambaridae) spreading in Madagascar. Journal of Crustacean Biology 29(4):562-567.
(*4) ジャパン・クレイフィッシュ・クラブ編, 2002, 世界のザリガニ 飼育図鑑, マリン企画, p43
(*5) 川井・高畑編著 2010 ザリガニの生物学 北海道大学出版会