外来種リストの選定について
選定の考え方と方法
北海道は、気候的には温帯から亜寒帯への移行帯に属し、周囲は豊かな海に囲まれており、その生物相は、本州以南とは異なる自然性豊かな北方らしい特徴を有し、独自の生態系を形成していることから、北海道ブルーリストでは、国外からの外来種とあわせて、国内(道外)からの外来種も選定している。
今回の改訂にあたっても、前回リスト同様に次の4つの視点により対象生物の選定を行うこととし、次表1「カテゴリー区分(対象生物選定の考え方)」により、個別の外来種の再評価を行い「カテゴリー区分」のA、B、C、D、E、h及びKの種をリストに掲載することとした。
4つの視点
1. 本道に導入されているか。 2. 本道に定着できるか。(越冬の可能性など) 3. 本道に定着しているか。 4. 本道への影響等が報告されている、あるいは懸念されるか
また、本道の生態系等への影響が最も懸念される「カテゴリーA」に区分された外来種については、対策の必要な種を明確化し、関係機関や団体が連携した対策が推進されるよう影響の程度等により対策の優先度を検討し、次表2「カテゴリー区分Aの細区分」により、新たに「A1~A3」に細区分した。
なお、細区分にあたっては、影響の評価、外来生物法における指定状況や日本や世界の侵略的外来種ワースト100の選定状況などに加え、現行の法制度による規制の有無、資源としての利用実態などを総合的に勘案し、選定した。
カテゴリー区分
オレンジ色に塗りつぶされているカテゴリー区分に該当する種が、ブルーリストの選定種である。 なお、実験・動物園利用などの封じ込め下にある動物、農地・林地・園地や家庭菜園、花壇・宅地の庭などの人の管理下で栽培されている植物については、選定していない。
表1 カテゴリー区分(対象生物の選定の考え方)
|
|
|
|
|
|
視点1 |
視点2 |
視点3 |
視点4 |
カ テ ゴ リ | 区 分 |
○:
導入されている
△:
不明またははっきりしない
×:
導入されていない可能性が高い
|
○:
定着できる(またはその恐れがある)
×:
定着できない可能性が高い
|
○:
定着している
△:
不明またははっきりしない
×:
定着していない可能性が高い
|
○:
影響等が報告されているあるいは懸念されている
△:
上記以外
|
○ |
○ |
○ |
○ |
A |
△ |
B |
△ |
○ |
C |
△ |
D |
× |
○ |
E |
△ |
F |
× |
× |
- |
G |
△・× |
○ |
○ (※3) |
○ |
H |
う ち 注 意 種 h (※4) |
△ |
△ |
○ |
△ |
× |
○ |
△ |
I |
× |
- |
- |
J |
(昆虫類のみ)導入されている「室内昆虫」である(※5) |
K |
注意事項
※1 「導入」とは 野生生物本来の移動能力を超えて、人為によって意図的・非意図的に移動した(された)ことを指し、導入の時期については、原則として明治時代以降に本道に導入された生物種を外来種として捉える。
※2 「影響」の例 1.上位捕食者としての影響、2.植生などへの影響、3.競合、駆逐の可能性、4.交雑による遺伝的攪乱、5.在来生物への病気、寄生虫の媒介、6.農林水産業などへの影響、7.人の健康への影響
※3 この欄は、在来種である可能性があることにより、視点1を「△」とした場合に適用する。
※4 「注意種」とは 導入される可能性が高く、導入されると定着し影響が懸念される等、特に注意が必要と考えられるもの
※5 貯穀害虫などは、A~Eなどに区分しにくいため、「室内害虫」としカテゴリー区分を「K」とする。
カテゴリー区分の細区分
北海道ブルーリスト2010に掲載される種のうち最も生態系等への影響が懸念される「カテゴリーA」の種について、A1、A2、A3の3段階に細区分した。
なお、A1、A2の種については、引き続き分布情報を収集し、今後のリストの見直しに反映するとともに、特にA1の種については、関係機関・団体と連携し、防除(定着または、拡散を防止するため、捕獲(除去)を行い適正に処分する)を行うなど引き続き対策を推進する。
表2 カテゴリー区分 A の細区分
|
|
緊急に防除対策が必要な外来種 |
本道の生態系等へ大きな影響を及ぼしており、防除対策の必要性について検討する外来種 |
本道に定着しており、生態系等への影響が報告または懸念されている外来種 |
注意事項
植物については、原植生が比較的明確でその学術的価値が高く、保護が優先されるべき地域内(原生自然環境保全地域、国立、国定公園特別保護地区など)においては、A2の植物についてもA1とみなす。
リストの分類
リストの分類は、次の参考文献を活用し、整理した。
表2 カテゴリー区分 A の細区分
|
|
分類群 |
参考文献 |
今泉吉典(1988)世界哺乳類和名辞典.平凡社 |
日本鳥類目録編集委員会(2000)日本鳥類目録.日本鳥学会 |
標準和名制定委員会(2003)爬虫両棲類学会報Vol.2003.No.1.日本爬虫両棲類学会 |
標準和名制定委員会(2003)爬虫両棲類学会報Vol.2003.No.1.日本爬虫両棲類学会 |
Nelson,J.S.(1994)Fishes of the World,third edition.John Wiley & Sons,Inc 中坊徹次編(1993)日本産魚類検索.東海大学出版会 |
九州大学農学部昆虫学研究室ほか(1989)日本産昆虫総目録.九州大学昆虫学教室 |
西村三郎編(1995)原色検索日本海岸動物図鑑[Ⅱ].保育社 |
奥谷喬司編(2000)日本近海産貝類図鑑.東海大学 Beesley,P.L.et al(1998)Mollusca: The Southern Synthesis.CSIRO Publ |
清水建美編(2003)日本の帰化植物.平凡社 |
|